TOBハンター月次報告書解説(2025年5月)【資本効率向上ファンド】

TOBハンター5月月次報告書解説 株式投資その他
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今回の記事では、2025年5月30日に公表された資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)の5月期の月次報告書について解説します。

TOBハンターの運用状況等を確認したい方の参考になれば幸いです。

なお、本記事はTOBハンターの購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。

TOBハンターの4月期の月次報告書については以下の記事でも紹介しています。

パフォーマンス概要(5月末時点)

  • 1ヶ月リターン:+4.98%
  • 3ヶ月リターン(設定来):+6.11%
  • 参考指数(TOPIX):+5.10%(1ヶ月)、+5.69%(3ヶ月)+3.60%(設定来)
  • 基準価額:10,611円
  • 純資産総額:2,523百万円

TOBハンターでは、TOB・MBO・M&A等の資本イベント発生期待の高い銘柄に投資。5月も複数のイベント発生により、絶対リターンは堅調にプラスとなっています。

TOBハンター 月次報告書より(作成基準日:2025年5月30日)

組入銘柄とポートフォリオ

  • 銘柄数:179
  • 主な上位銘柄(組入比率1%前後)
     例:住友電設、ブレインパッド、コスモスイニシア、菱友システムズ、シグマクシスHD 等
  • 時価総額別構成
     - 小型株(500億円未満):約27%
     - 中型株(500億円〜5,000億円):約56%
     - 大型株(5,000億円超):約14.6%
  • 東証市場別構成
     - プライム市場:69.7%、スタンダード市場:25.35%、グロース市場:2.56%
  • 資産配分
     - 株式:97.93%、現金:2.07%、先物等:なし

No.銘柄コード銘柄名業種上場市場組入比率
11949住友電設建設プライム市場1.06%
23655ブレインパッド情報通信プライム市場1.04%
34685菱友システムズ情報通信スタンダード市場1.03%
48844コスモスイニシア不動産スタンダード市場1.02%
56088シグマクシス・ホールディングスサービスプライム市場1.01%
66016ジャパンエンジンコーポレーション輸送用機器スタンダード市場1.01%
75352黒崎播磨ガラス土石製品プライム市場0.99%
84483JMDC情報通信プライム市場0.99%
91871ピーエス・コンストラクション建設プライム市場0.99%
101890東洋建設建設プライム市場0.99%
TOBハンター 組入上位10銘柄

運用概況(2025年5月)

全体の市場環境と相対的パフォーマンス

5月の日本株市場は総じて堅調で、TOPIXは+5.0%、日経平均は+5.3%、東証グロース250指数は+10.1%といずれも上昇。背景には以下のようなポジティブな要因が挙げられます。

  • 米株式市場の好調
  • 円安ドル高の進行
  • 米中関係の改善進展

資本イベントを背景とした個別銘柄での成果

TOBハンターでは「親子上場解消」「ノンコア事業の切り離し」「買収期待」などをテーマに、TOBやMBO、M&Aを収益源とする投資戦略を採用。5月も以下のようなイベントが発生し、キャピタルゲイン等に繋がりました。

  • NTTドコモ、鳥居薬品、日本道路、住信SBIネット銀行でTOB
  • 日本高周波鋼業で株式交換による完全子会社化
  • アルゴグラフィックスの大規模自社株買い(予想外の展開ながらイベント性ありとして売却)

これらはすべて利益確定を伴う売却が完了しており、TOBハンターとしての運用が奏功した結果といえます。

アルゴグラフィックスの大規模自社株買いから垣間見る投資姿勢

TOBハンターの投資姿勢が見られましたので、月次報告書から引用します。

 5月に入って、当ファンドにおいて、NTTデータのTOBを始めとする資本イベントが頻発して参りました。この動きを見て、弊社では、当面の間このような資本イベントが発生する度に、月報の発行まで待つことなく、タイムリーな情報発信を行うことに決めました。また、ポジティブな情報のみならず、ネガティブな情報も含めた、情報発信を心掛けて参ります。5月のアルゴグラフィックスの自社株TOBも、弊社が期待していたシナリオである、大株主のSCSKによる持分買い増しとは真逆の、「SCSKによる保有株売却+アルゴグラフィックスによる割安価格での自社株買い」という形になりました。この結果として、株価がどう動くかが注目されました。割安価格での自社株買いという側面に焦点が当たれば株価は上昇するし、TOB期待剝落という側面が重視されれば株価は下落するという意味で、両方可能性があったわけです。

 結果的には、自社株買い発表の翌営業日に、株価は上昇しました。それを受けて、即座に保有同社株を全株売却しました。その後、同社株は下落に転じましたので、絶好のタイミングで売却できました。ただし、仮に株価が下落していたとしても、弊社では全株売却していました。と言うのも、当ファンドは、運用の一般的ルールとして、「保有株に関して何らかの資本イベントが発生した場合には、そのイベントがポジティブかネガティブかにかかわらず、それに続く別の資本イベント発生を相応の確率で予測できない限り、売却する」ことを心掛けているからです。資本イベントが発生した後に、「そうは言っても、この会社には成長力があるから保有しようかな」などと考えるのは、当ファンドの趣旨に反すると考えています。そして、仮に思惑が外れて売却損が出るような場合でも、開示を行う方針であり、上記のアルゴグラフィックスのケースでも、売却損が出ても開示は行うつもりでした。

TOBハンター公式 5月期 月次報告書より

小型バリュー株の相対的劣位

5月はグロース株が優位となりましたが、小型バリュー株が不調でした。TOBハンターでは小型バリュー株に多く投資しているため、市場全体と比較すると不利な地合いでしたが、資本イベントによる個別成果でトータルではプラスを確保しました。

今後の見通しと戦略

世界経済に対するリスク認識

TOBハンターでは世界経済の先行きに対して慎重な見方を続けています。
特に以下の反動リスクに着目されています。

  • 生成AIブームの過熱の反動(高コスト)
  • コロナ後リベンジ消費の反動
  • 脱炭素投資の鈍化
  • トランプ政権による需給のゆがみの巻き戻し
    これらが同時多発的に表面化すれば、世界的にリスクオフとなる可能性も否定できません。

日本市場に対する期待

他方で日本株に関しては、以下のポジティブ要因が支えになると予想されています。

  • 自社株買いやTOB、MBOなどの資本政策強化
  • 東証によるPBR1倍割れ企業への改善要請
  • 株主還元(配当・増配)の加速
  • 供給制約(株式削減)による需給面の引き締め

企業業績に対する不透明感はあるものの、株価を支える要因は多いと評価されています。

今後の株価見通しと対応

  • ドル円相場を140~145円と想定
  • 日経平均株価を37,000~39,000円のレンジと想定
  • 7~8月に発表される第1四半期決算が予想以上なら年後半の上昇も期待

このような前提のもと、TOBハンターでは以下を実行していくとされています。

  • ポートフォリオの定期見直しと最適化
  • TOB/MBO期待銘柄の継続的発掘と入替
  • 小型株中心の投資維持(需給面の魅力)

特に、親子上場の解消や非効率資本の見直しを加速させる企業行動を重視していく姿勢です。

まとめ

今回の記事では、2025年5月30日に発表された「資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)」の5月期の月次報告書について解説しました。

TOBハンターは、TOB(株式公開買付)やM&Aといった資本イベントを投資テーマとするアクティブファンドです。5月末時点での1ヶ月リターンは+4.98%、設定来では+6.11%と、TOPIXを上回る好成績を記録しています。

5月は、NTTドコモや鳥居薬品など複数の企業でTOBが行われ、これによりキャピタルゲインを実現しました。また、アルゴグラフィックスの自社株買いのように、予想外の展開であっても、イベント発生後は迅速に売却判断を行う運用姿勢が貫かれていました。

ポートフォリオは小型・中型株を中心に構成されており、スタンダード市場の銘柄も多く含まれています。5月は小型バリュー株が不調でしたが、上記TOB等のイベントにより安定したパフォーマンスを維持しています。

今後については、世界経済への慎重な見方を保ちつつも、日本市場の構造改革や資本政策の改善を評価し、引き続きTOBやMBOに関する銘柄への選定と見直しを継続していく方針となっています。

個人的には2025年5月のTOB実績は目を見張るものがあると感じています。私自身はTOBハンターを購入していませんが、上位組み入れ銘柄を参考に、割安性や配当利回り等を考慮した上で、一部の個別銘柄を購入してみるのも悪くないかなと考えているところです。

TOBハンターによる投資戦略については以下の記事でも紹介しています。

なお、TOBハンターについて興味のある方は、以下の公式サイトでも確認してみてください(リンク):

資本効率向上ファンド 愛称:TOBハンター - ファイブスター投信投資顧問株式会社
*投資判断は自己責任にてお願い致します

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