今回の記事では、資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)の紹介と、TOBに関する投資戦略について考えてみたいと思います。
私自身、これまでの投資経験でTOBによる利益を得られたこともありますので、TOBについて興味をお持ちの方の参考になれば幸いです。
なお、本記事はTOBハンターの購入をオススメする意図はなく、あくまで株式投資におけるTOBに関する戦略を考えることが趣旨ですので、ご了承ください。
TOBとは?
TOB(Take Over Bid:株式公開買付け)は、ある企業が他の企業の株式を市場外で一定の条件で買い集める手続きのことです。買収や経営権取得を目的として行われることが多く、日本では金融商品取引法に基づくルールが定められています。
TOBの概要については以下の通りです。
項目 | 内容 |
---|---|
目的 | 企業買収、子会社化、経営権の取得、持株比率の引き上げなど |
方法 | 一定期間・価格・株数を公表して、既存株主に株式の売却を呼びかける |
価格 | 市場価格よりプレミアム(上乗せ価格)をつけるのが一般的 |
期間 | 原則として20営業日以上60営業日以内 |
実施者 | 企業、投資ファンド、個人投資家など |
対象 | 上場企業の株式(全部または一部) |
開示義務 | 5%以上の取得を目的とする場合、事前にTOB公告が必要 |
TOBハンターとは?
皆さんは、TOBハンターをご存じでしょうか。ここでは、大和証券グループであるファイブスター投信投資顧問株式会社が運用する資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)を指します。
TOBハンターの特色は、以下の通りです。(公式サイトより)
- 親子上場解消などを背景として他社からのTOB(株式公開買い付け)の可能性の高い銘柄に着目した投資を行います。
- 銘柄選定にあたっては、日本企業におけるコーポレートガバナンスの改革・進捗の動きを睨み、親子上場ないしは親子上場に準じた形態を取る企業群を主な投資対象として、それら企業群の望ましい資本構成への変化の可能性を考慮・重視した上で行います。
- マザーファンドの受益証券への投資を通じて、株式の組入比率は、通常の状態で原則として高位を基本とします。
要は、これからTOBされそうな銘柄に投資して、TOBによる上乗せ価格(プレミアム)分の利益を得よう!という趣旨のファンドです。
2025年4月30日の月次レポートによると、保有銘柄数は173で、組入上位銘柄は以下の通りです。
No. | 銘柄コード | 銘柄名 | 業種 | 上場市場 | 組入比率 |
1 | 6088 | シグマクシス・ホールディングス | サービス | プライム市場 | 1% |
2 | 8844 | コスモスイニシア | 不動産 | スタンダード市場 | 1% |
3 | 6023 | ダイハツディーゼル | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1% |
4 | 1949 | 住友電設 | 建設 | プライム市場 | 1% |
5 | 4816 | 東映アニメーション | 情報通信 | スタンダード市場 | 1% |
6 | 7552 | ハピネット | 卸売 | プライム市場 | 1% |
7 | 7173 | 東京きらぼしフィナンシャルグループ | 銀行 | プライム市場 | 1% |
8 | 6368 | オルガノ | 機械 | プライム市場 | 1% |
9 | 4483 | JMDC | 情報通信 | プライム市場 | 1% |
10 | 8194 | ライフコーポレーション | 小売 | プライム市場 | 1% |
TOBハンター2025年5月の実績
こちらのファンド、2025年5月の結果がすごいことになっています。
TOBハンターが保有する銘柄のうち、1か月だけで以下の銘柄でTOBが発表されました。
- 5/7 鳥居薬品 (4551)
- 5/8 NTTデータ (9613)
- 5/9 アルゴグラフィックス (7595) (自社株TOB)
- 5/12 日本高周波鋼業 (5476)
- 5/14 日本道路 (1884)
- 5/29 住信SBIネット銀行(7163)
たまたま時期が重なったとはいえ、ものすごい数となりました。
TOBを狙って投資できるか?
現実的な話、TOBを狙って投資し、利益を得ることができるかについて考えます。
結論として、個人的には現実的ではなく、難しいと考えます。
ただし、もともと投資に値する銘柄が、結果的にTOBの対象となることもあります。
また、投資すべきか迷っているボーダー上の銘柄の場合、TOBされる可能性が最後の後押しの判断材料になり得るかと思います。
あくまでも、持っていた銘柄がたまたまTOBされてラッキー!程度に捉えるのが良いと考えます。
TOBによる損失に要注意!!
これは私の実体験ですが、以前、2025年3月14日にエコナビスタ(5585)がTOBを発表しました。
2025年3月13日終値1,664円に対して31.61%のプレミアムを乗せた2,190円がTOB価格となりました。
これに対し、私の平均取得単価は約2,900円だったため、大損することになりました。
いずれ株価3,000円は奪還すると思い1年以上保有していたのですが、最悪の結果となりました。
とはいえ、TOB発表までの半年程度は株価が1,600円前後で低迷していたため、保有期間が短いホルダーにとっては大きな利益を上げることができました。
このように、TOBでは必ずしも利益に繋がらない可能性があることは頭の片隅に置いておいてください。
まとめ
今回はTOBハンターの実績と、TOBを狙った投資について解説しました。
TOB(株式公開買付け)は、基本的には投資家にとってプレミアムによる利益獲得の機会となります。
資本効率向上ファンド(TOBハンター)は、こうしたTOBの機会を狙って構成された珍しいファンドであり、2025年5月には6銘柄がTOBの対象となるなど、目を見張る実績を挙げました。
しかし、一般投資家が同様のアプローチでTOBを狙い撃ちするのは、市場予測の困難さなどから現実的ではないと考えます。TOBは結果論でしか判断できないことも多く、「たまたま保有していた銘柄がTOBされたらラッキー」くらいのスタンスで臨むのが賢明です。
また、私の実体験にもあるように、TOB価格が自分の取得価格を下回れば損失が出るため、「TOB=必ず儲かる」とは限らない点にも注意が必要です。
したがって、TOBの可能性はあくまで投資判断の参考材料として活用し、本質的な企業価値やファンダメンタルズに基づく長期的な投資判断を優先すべきでしょう。
なお、TOBハンターについて興味のある方は、以下の公式サイトでも確認してみてください(リンク):

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