本記事では、VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLOR(証券コード:5032)の2026年4月期第1四半期決算について、2025年9月10日に開示された決算資料をもとに解説します。
ANYCOLORの業績を確認したい方や、株式の購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
2025年4月期の通期決算については以下の記事でも解説しています。
2026年4月期第1四半期 業績ハイライト
ANYCOLOR株式会社は、2026年4月期 第1四半期において、前年同期比で売上高が倍増を超える驚異的な成長を達成しました。利益面でも同様に大幅な伸びを記録し、当初の見通しを大きく上回る好調なスタートを切っています。
- 売上高:157億6,800万円 (前年同期比 +112.1%)
- 営業利益:70億400万円 (前年同期比 +157.6%)
- 四半期純利益:48億8,400万円 (前年同期比 +159.9%)

成長の主な牽引役は「コマース」分野と「イベント」分野です。コマースではVTuberユニットの周年施策や季節性の大型施策が売上を押し上げました。イベント分野では、特に「にじさんじ WORLD TOUR 2025」のネットチケット販売が想定を大幅に上回る反響を呼び、業績に大きく貢献しました。コスト管理の徹底も奏功し、利益率も大きく改善しています。
領域 | 当初予想(上限) 金額(百万円) | 実績(百万円) | 実績 ÷ 予測(上限) (%) |
---|---|---|---|
ライブストリーミング | 1,400 | 1,385 | 98.93% |
コマース | 10,000 | 10,394 | 103.94% |
イベント | 1,350 | 2,117 | 156.96% |
プロモーション | 1,800 | 1,866 | 103.67% |
その他 | 50 | 7 | 14.00% |
合計(売上高) | 14,600 | 15,768 | 107.95% |
事業領域別の売上状況
前年同期比では、全事業領域で前年同期比プラス成長を達成しましたが、特にコマースとイベントの伸びが顕著です。
- ライブストリーミング:13億8,500万円 (前年同期比 +16.3%) メンバーシップ中心の収益構造で安定的に推移しています。大型企画や3Dライブ配信も好調でした。
- コマース:103億9,400万円 (前年同期比 +124.6%) VTuberユニット施策やライブ関連グッズが計画を上回り、全体の売上を力強く牽引しました。
- イベント:21億1,700万円 (前年同期比 +9,980%) 前年同期は2,100万円だったのに対し、今期は「にじさんじ WORLD TOUR 2025」が絶好調で、飛躍的な成長を遂げました。
- プロモーション:18億6,600万円 (前年同期比 +21.6%) 案件数、平均単価ともに堅調に推移し、IPコラボなどの大型施策も増加傾向にあります。

2026年4月期第2四半期に向けた事業展開
第2四半期は、施策の実施時期のバランスから、売上・利益ともに今期で最も小さい四半期となる見込みです。下期以降の施策拡充に向けた準備期間と位置づけられています。


サービス分野 | 第2四半期にかけての展開 |
イベント | ・「にじさんじ WORLD TOUR 2025」の神戸・福岡・広島公演を実施予定。 |
コマース | ・「NIJISANJI Elegant Mode」やChroNoiRの「Choose your favorite」などのグッズ展開を予定。 |
プロモーション | ・横浜市長選挙とのタイアップや、人気アプリ「リヴリーアイランド」とのコラボなどを実施。 |
特にイベント(ライブ)は、第1四半期では地方での開催があったにもかかわらず予想を超える利益となりましたので、第2四半期についても引き続き期待ができそうです。
2026年4月期 通期業績予想
第1四半期が当初の計画を大幅に上回る進捗となったことを受け、2025年6月11日に公表した通期の業績予想を上方修正しています。
- 売上高: 500億円 ~ 520億円
- 営業利益: 205億円 ~ 215億円

第1四半期終了時点での通期業績予想(下限)に対する進捗率は、売上高が31.5%、営業利益が34.2%と非常に高い状況です。
中期経営目標(2027年4月期)
ANYCOLOR社は、2027年4月期に売上高600億円、営業利益240億円を達成するという中期経営目標を掲げています。これは2024年4月期比で売上+88%、営業利益+94%という高い成長目標です。


中期目標達成に向けた事業拡大の進捗状況
目標達成に向け、VTuberのサポート体制強化やコンテンツ制作基盤の拡充を着実に進めています。
- VTuberサポート体制の強化:2025年4月期を通じて100名超の人材を採用し、タレントマネジメントやグッズ企画、イベント企画などの体制を強化しました。
- 新スタジオの開設:従来の3倍の規模となる新スタジオを開設し、コンテンツの制作能力を大幅に向上させました。3Dスタジオの稼働時間は旧スタジオ比で70%以上増加しています。
- 継続的なVTuberデビュー:VTA(バーチャル・タレント・アカデミー)を通じて、中長期で活躍できる次世代VTuberの発掘・育成を強化しています。
※2025年4月期の資料では、VTAに4.1万人もの応募があったようです。凄まじい倍率です。
株主還元
ANYCOLOR社は事業成長への投資と並行し、積極的な株主還元方針を打ち出しています。
2027年4月期までの累計営業キャッシュフロー約400億円のうち、300億円以上を株主還元に充てる方針です。還元は主に自己株式の取得と、安定的・継続的な配当によって実施されます。 2026年4月期からは、より明確な方針として配当性向30%以上を目安とすることを公表しており、同年の配当予想は1株当たり70円(中間35円、期末35円)としています。

ANYCOLOR(5032) 銘柄基本情報(株価データ)
以下のデータは、2025年9月10日終値時点のものです。
指標 | 数値(2025年9月10日時点) |
株価 | 4,950 円 |
時価総額 | 約 3,025 億円 |
PER | 約 26.5 倍 |
PBR | 約 13.7 倍 |
配当利回り | 約 1.41% (会社予想) |
1株配当(予想) | 70 円(2026年4月期) |
EPS(1株当たり利益) | 186.56 円(2026年4月期、会社予想ベース) |
ROE | 約 55.2% (2025年4月期実績) |
株価チャート

まとめと管理人の投資判断
今回の記事では、2026年4月期 第1四半期のANYCOLOR(5032)決算資料について解説しました。
今回の決算は、コマースとイベントの両輪が爆発的な成長を見せ、売上・利益ともに市場の予想を大きく上回る素晴らしい内容でした。通期業績予想の上方修正、そしてその達成に向けた進捗率の高さは、同社の事業の勢いを明確に示しています。
管理人の投資判断ですが、引き続き強気の姿勢で臨めると考えています。高い成長性を維持しながら、営業利益率44.4%(2026Q1実績)という驚異的な収益性を両立している点は、他のグロース企業と比較しても際立っています。ROEも50%超(2025通期実績)とわけが分からない高さになっています。
今後、株価は上昇基調で推移していくと予想しますので、何らかの要因で押し目ができれば積極的に狙っていきたいと考えています。
堅実な投資戦略と積極的な株主還元が魅力
今後の成長ドライバーとしては、国内でのユニット展開の深化や大型企画の継続に加え、海外展開(NIJISANJI EN)のさらなる拡大が期待されます。
競合のカバー社が「ホロアース」というメタバース開発に大規模な先行投資を行っているのに対し、ANYCOLOR社の投資はスタジオ拡充など、より直接的にコンテンツ制作能力と収益に結びつく分野に集中しています。この堅実な経営判断が、高い利益率とキャッシュ創出力につながっていると思います。
さらに、創出したキャッシュを「株主還元に300億円以上」という明確な方針で株主に還元する姿勢は、投資家にとって大きな魅力です。ここは賛否が分かれるところかもしれませんが、配当性向30%以上という具体的な目標を掲げたことも、長期的な株主価値向上への姿勢という意味では評価できます。
もちろん、VTuber事業特有の人気VTuberへの依存リスクは常に念頭に置く必要があります。しかし、同社はVTAを通じた継続的な新人デビュー戦略 やユニット展開 によってリスク分散を図っており、特定のタレントへの過度な依存構造からの脱却を進めています。
IR情報は以下の公式サイトから確認可能です。

カバーの2026年第1四半期決算については以下の記事で解説しています。
ANYCOLORとカバーの比較については以下の記事でも解説していますので、興味のある方はご参照ください。
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