今回の記事では、VTuberグループ「にじさんじ」を手がけるANYCOLOR(証券コード:5032)の2025年4月期第3四半期決算について、決算資料をもとに解説します。
ANYCOLORの業績を確認したい方や、株式の購入を迷われている方の参考になれば幸いです。
なお、本記事は個別銘柄の購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。
なお、決算資料は以下の公式サイトから確認できます。

2025年4月期 第3四半期決算概要
ANYCOLOR株式会社の2025年4月期 第3四半期(2024年2月〜2024年4月)の決算は、過去最高の四半期売上高と大幅な増収増益を達成しました。
各項目とも、当初の見通しを上回る着地となりました。
- 売上高:115億6,400万円(前年同期比 +48.5%)
- 営業利益:42億400万円(前年同期比 +64.3%)
- 当期純利益:29億円(前年同期比 +63.8%)

ビジネス領域別内訳
- ライブストリーミング:メンバーシップ収益が安定的に推移し、想定を上回る好調な着地となりました。
- コマース:当初計画では大型施策が少なかったものの、各施策が想定を大幅に上回り、前四半期の発送遅延解消も寄与し、四半期ベースで過去最大の売上高を記録しました。グッズの未発送残高は増加していますが、これは第4四半期の過去最大のグッズ発送量を見込むことや、想定以上の需要による受注生産品が多かったためで、想定外の発送遅延は発生していません。
- イベント:「にじさんじ歌謡祭2024」や「NIJISANJI COUNTDOWN LIVE 2024→2025」などの大型イベントや、ソロ・ユニットライブが当初想定を上回る反響で、四半期ベースで過去最大の売上高となりました。
- プロモーション:案件単価は伸長しているものの、大型イベントによるVTuberリソースの集中で前四半期比では減収を見込み、概ね計画通りに着地しました。
業績予想の修正
上期のコマース発送遅延やイベントの影響で当初進捗が遅れていたものの、第3四半期の好調な進捗を踏まえ、通期の業績予想を上方修正しました。
- 売上高:従来予想の390億円から407億円へ
- 営業利益:従来予想の148億円から154億円へ


VTuberとは?
資料では、次のような説明がされています。
- アニメキャラクターではないが、キャラクター性を持つ
- アイドルではないが、配信者としての活動を行う
- YouTuberではないが、YouTubeを主な活動拠点とする

VTuberデビューまでのサポート体制

コスト構造
- 直接変動費率(VTuber報酬、プラットフォーム手数料、グッズ・イベント原価など):49.8%(前年同期比 -2.5pt)。イベント売上高の増加により前四半期比では上昇しましたが、年間では改善傾向です。
- その他原価・販管費(人件費、地代家賃、外注費など):スタジオ移転に伴う一時費用は増加したものの、対売上高比率は前四半期および前年同期比で改善しました。


注(1)VTuberへの支払報酬、各種プラットフォームへの手数料、グッズやイベントに係る製造原価を含む
注(2)人件費、地代家賃、外注費、その他の費用等
VTuber数およびANYCOLOR ID、従業員数の推移
- VTuber数は横ばい(にじさんじからのデビュー・卒業なし、NIJISANJI ENから1名卒業)。
- ANYCOLOR ID(にじさんじオフィシャルストア等で利用するID)は順調に増加し、ファンベースが拡大しています。
- 従業員数は将来の成長に向けた事業投資として、規律ある採用計画に基づき増加傾向にあります。



中期的な成長に向けた戦略
2027年4月期に向けて、売上高600億円、営業利益240億円を目指す中期経営目標を掲げています。
- 継続的なVTuberの輩出
- 年平均10~15%程度の新規デビューを計画。
- 「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」を強化し、多様な人材の発掘・育成を推進。

- 継続的なVTuberの輩出
- 年平均10~15%程度の新規デビューを計画。
- 「バーチャル・タレント・アカデミー(VTA)」を強化し、多様な人材の発掘・育成を推進
- VTuberあたり収益の拡大
- 年平均10~15%程度の成長を見込む。
- ユニットプロデュースの強化により、新たなファン層の開拓と既存ユニットの成長を促進。
- コマースの展開強化:人員拡充、適切な販売スケジュール管理、時流に合わせた商品企画(例:にじぱぺっと、チェキカード)により、ファン需要に応じた供給と収益最大化を目指す。
- 事業基盤の強化
- VTuberを支えるビジネス、エンジニア、デザイナーなどの従業員を継続的に増員。
- 配信スタジオへの設備投資:2024年秋頃の運用開始を目途に、現在の3倍規模に拡張した新スタジオを整備し、コンテンツ制作能力と品質を向上させる。
- ユニットプロデュースの強化
- 多様なVTuberの強みを活かし、ユニット活動を加速。
- ユニット間のシナジーで新たな魅力を創出し、ファン層を拡大。
- 音楽コンテンツやイベントなど、ユニット単位での収益機会を多角化。

- コマースの展開強化
- 人員拡充と供給体制整備で、グッズ等の企画・製造ラインを拡大。
- 適切な販売スケジュール管理と時流に合わせた商品企画で、需要に応じた供給と売上最大化を目指す。

株主還元とM&A
- 事業から生み出される利益は、成長への投資、株主還元、内部留保のバランスを考慮して活用。
- 2027年4月期までの累計営業キャッシュフロー約400億円のうち、株主還元として300億円以上を予定(主に自己株式取得、安定配当)。
- M&Aも視野に入れており、自己資金と負債を活用し、最大500億円程度の予算を想定。IPパイプラインや新規マネタイズ機能の獲得、当社IPを成長させる機能獲得などを目的とします。

長期ビジョン
ANYCOLORの長期ビジョンは、単にVTuber事業の拡大に留まらず、VTuberを起点としてエンターテインメント業界全体の広範な市場を開拓し、再定義していくというものです。
資料では、「魔法のような、新体験を。」というコーポレートミッションが提示されており、具体的にVTuberが活躍できる領域を、以下の既存エンターテインメント市場と関連付けて説明しています。
- 国内アニメ市場(1.5兆円、対前年比 +2.8%): VTuberは、そのキャラクター性やストーリー性から、アニメコンテンツとの親和性が非常に高いです。VTuberを軸としたアニメ制作や、アニメと連動した企画を通じて、今後さらに本格的なメディアミックス展開が期待されます。
- 国内音楽市場(1.2兆円、対前年比 +42.3%): VTuberは、その高い歌唱力や表現力を活かし、音楽アーティストとしても大きな存在感を示しています。CD販売、各種ストリーミングプラットフォームでの楽曲配信、そしてライブイベント開催を通じて、音楽市場に深く関与しています。今後も音楽業界における影響力を拡大していく方針です。
- 動画広告市場(6,253億円、対前年比 +12.0%): VTuberは、その強い影響力と多様なキャラクター性を活かし、企業からのプロモーション案件を数多く手掛けています。従来の広告塔とは異なる形で効果的なプロモーションを実現しており、動画広告市場において新たな価値提供者となっています。今後も様々な企業とのタイアップを通じて、この市場での存在感を高めていくことが期待されます。

資料では、これらの既存市場に加え、「ライブ配信」「ライブイベント」「グッズ販売」といったVTuber事業の基盤をさらに強化していくことが示唆されています。そして、最終的には、これら全ての活動が結びつき、「新たなエンタメ経済圏」の創出を目指しています。
この「エンタメ経済圏」という言葉は、単なる市場規模の拡大だけでなく、VTuberという存在が、コンテンツの消費と創作の境界線を曖昧にし、ユーザーとクリエイターがより密接に関わる新しい循環を生み出す可能性を示唆しています。将来的には、人々の生活様式や働き方がよりクリエイティブなものへと変化し、VTuberがその中心的な役割を担うというビジョンです。
まとめ
今回の記事では、2025年4月期(第3四半期)のANYCOLOR(エニーカラー・5032)決算資料について解説しました。
目覚ましいスピードで売上高・営業利益を上げ続けていますが、どこまで持続できるかがポイントになるかと思います。
私も最近、にじさんじ所属のVTuberの配信をたまに見ることがありますが、面白いしすごい勢いだなと感心します。
応援の気持ちでANYCOLORの株を買おうか少し迷っていましたが、直近株価が上がっていて躊躇しているところです。
なお、IR情報は以下の公式サイトから確認可能です:

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