本記事では、VTuberグループ「にじさんじ」を手がけるANYCOLOR(証券コード:5032)の2025年4月期通期決算について、決算資料をもとに解説します。
ANYCOLORの業績を確認したい方や、株式の購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
なお、本記事は個別銘柄の購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。
なお、前回の第3四半期の決算資料については以下の記事でも解説しています。
2025年4月期 通期業績ハイライト
ANYCOLOR株式会社は、2025年4月期(2024年5月1日〜2025年4月30日)において、売上高、営業利益ともに過去最高を達成し、引き続き高い成長性を示しました。
- 売上高: 428億7,700万円 (前年同期比34.0%増)
- 営業利益: 162億8,000万円 (前年同期比31.7%増)
- 当期純利益: 115億1,100万円 (前年同期比31.9%増)
- 営業利益率: 38.0%


経営指標とコスト構造
- 営業利益率は38.0%と高水準を維持。
- 直接変動費率はイベント売上増加により前年同期比で若干上昇したが、売上総利益率は依然として高水準。
- その他原価・販管費は、スタジオ移転費用や人件費増加があったものの、売上高に対する比率は改善し、効率的な経営が継続。
ビジネス領域別の実績と貢献
- コマース: 売上高278億4,200万円を記録。所属VTuber人気の高まりと魅力的なグッズ企画が好調。「にじぱぺっと」や「チェキ」といった新製品がヒットし、売上拡大に大きく貢献。
- プロモーション: 売上高70億5,900万円。企業案件の実施数および平均単価の上昇が貢献。
- イベント: 売上高28億2,100万円。大規模な周年イベントや「にじさんじフェス」の開催が寄与し、高い増収率を達成。
- ライブストリーミング: 売上高50億5,600万円。メンバーシップや広告収益が堅調に推移した一方で、スーパーチャットが減少し、全体としては横ばいで推移。


2026年4月期 業績予想
引き続き、売上・利益ともに二桁成長を見込んでいます。
同社は14.3%から18.9%の売上成長を見込んでおり、継続的な成長を予測しています。
- 売上高予想: 490億円~510億円
- 営業利益予想: 190億円~200億円
- 当期純利益予想: 131億8,200万円~138億7,600万円

項目 | 2026年4月期 業績予想 | 2025年4月期 実績 | 前年比 増減額 | 前年比 増減率・差分 |
---|---|---|---|---|
売上高 | 490〜510 億円 | 428.8 億円 | +61.2〜+81.2 億円 | +14.3%〜+18.9% |
営業利益 | 190〜200 億円 | 162.8 億円 | +27.2〜+37.2 億円 | +16.7%〜+22.9% |
営業利益率 | 38.8%〜39.2% | 38.0% | – | +0.8%〜+1.2% |
経常利益 | 190〜200 億円 | 162.2 億円 | +27.8〜+37.8 億円 | +17.2%〜+23.3% |
経常利益率 | 38.8%〜39.2% | 37.8% | – | +1.0%〜+1.4% |
当期純利益 | 131.8〜138.8 億円 | 115.1 億円 | +16.7〜+23.7 億円 | +14.5%〜+20.5% |
当期純利益率 | 26.9%〜27.2% | 26.8% | – | +0.1%〜+0.4% |
1株当たり純利益(EPS) | 215.86〜227.22 円 | 188.57 円 | +27.29〜+38.65 円 | +14.5%〜+20.5% |
2026年4月期 第1四半期業績見通し
成長戦略として、コマース領域ではVTuberユニットを中心とした多様なグッズ企画 、イベント領域では「にじさんじ」7周年記念ライブツアー 、プロモーション領域では大型IPコラボなどを通じて全社成長を牽引する方針です。
売上高:132.5億円〜146億円
→前年比 +14.3%〜18.9%の増収見込み
営業利益:52億円〜57.5億円
→前年比 +16.7%〜22.9%の増益見込み

コマース・プロモーション・イベント
第1四半期は、売上高が132.5億円~146億円(前年同期比+78.2%~+96.4%)と大幅な成長を見込んでいます。「くら寿司×にじさんじ」キャンペーンや「NIJISANJI WORLD TOUR 2025 – 仙台公演」などの主要施策がこれを後押しする見込みです。

中期的な成長に向けた事業進捗
中期経営目標
2027年4月期は、さらなる飛躍を目指す中期経営目標を掲げています。
営業利益目標: 240億円 (2024年4月期比+94%、CAGR 25%)
売上高目標: 600億円 (2024年4月期比+88%、CAGR 23%)


今後の成長については、以下のようなタレント育成、コンテンツ制作、ファンエンゲージメントに焦点を当てた多角的な戦略に取っていくとしています。
VTuber数の増加と育成
2026年度についても特色あるVTuberデビューを継続し、VTuberのジャンル/属性の面で多様性を促進し、新しいファン層を開拓します。
- 2025年4月期には合計19名の新規VTuberがデビュー。
- VTuber育成機関「バーチャル・タレント・アカデミー (VTA)」への投資を継続しており、2025年4月期には累計応募者数が4.1万人に達しました 。今後も年間10~15%のVTuber純増を目指す。


VTuberあたり収益の拡大
- 「にじさんじ甲子園」や「にじさんじフェス」といった全体での大型企画を推進中。
- VTuberユニットでの活動を強化し、オリジナル楽曲のリリースやライブイベントを積極的に実施。
- 2025年4月25日に、初の常設リアル店舗「にじさんじ ぬいストア」を横浜ビブレにオープン。
- デビュー年度の浅いVTuberが高い収益貢献を見せており、収益化までの期間が早期化する傾向。

注(1):年間売上高を期末VTuber数で除して算出
事業基盤の強化
- 従業員数の増加:VTuberのマネジメント、コンテンツ企画、エンジニアなど、成長を支える人材を強化。
- スタジオ強化:従来の3倍の面積規模を持つ新スタジオを開設し、3D配信や番組収録の稼働時間が旧スタジオ比で70%超増加するなど 、コンテンツ制作能力を大幅に向上。

株主還元とM&A戦略
- 2027年4月期までの累計営業キャッシュフロー(約400億円)のうち、300億円以上を株主還元に充てる方針(主に自己株式取得)。
- M&Aも積極的に検討し、最大500億円程度の予算を想定。IP獲得や新規マネタイズ機能獲得を目指す。

配当施策
- 2026年4月期より剰余金の配当については、安定的かつ継続的に実施することをより
明示するため、配当性向30%以上を目安とする方針を開示 - 2026年4月期の配当予想は1株当たり70円(中間35円、期末35円)
事業内容補足
VTuberとは?
資料では、次のような説明がされています。
- アニメキャラクターではないが、キャラクター性を持つ
- アイドルではないが、配信者としての活動を行う
- YouTuberではないが、YouTubeを主な活動拠点とする

VTuberデビューまでのサポート体制

事業ポートフォリオ
以下の事業領域が相互に連携し、VTuberの活動を多角的に収益化するエコシステムを構築しています。
- ライブストリーミング: YouTubeメンバーシップ、広告収益など。ファンとの双方向コミュニケーションが中心。
- コマース: VTuber関連グッズの企画・製造・販売。商品の企画力とサプライチェーン管理が重要。
- イベント: リアルおよびオンラインでのライブ、ファンミーティング、フェスなどの企画・開催。チケット販売や会場グッズ販売が収益源。
- プロモーション: 企業とのタイアップ広告、コラボレーション企画。VTuberの影響力を活用したマーケティング支援。


多様なファンベース:特に女性と20代から強い人気
- 若年層・Z世代を中心に性別・年齢幅広いファン基盤を構築
- 特に、グッズ購入を中心に女性ファン層が多い点が特徴


長期業績推移
VTuberの黎明期に当たる2017年の創業以来堅調に業績を伸ばし、国内最大規模のVTuberプロダクションに成長しています。

事業リスクと対応策
リスク分類 | リスクの概要 | 対応方針 |
---|---|---|
人材に関するリスク | ・事業拡大に伴い優秀な人材の採用が重要 ・獲得競争激化や市場ニーズの変化により採用が難航する可能性 ・現在の人材が流出する可能性 | ・積極的な採用活動を実施 ・働きやすい環境整備や人事制度構築に取り組む ・業務を通じたトレーニングや研修制度の充実により、従業員が力を発揮できる体制を整備 |
人気VTuberへの依存 | ・特定のVTuberの人気に収益が依存する構造の可能性 ・人気VTuberの活動休止や卒業・引退によって業績に影響が出るリスク | ・売上は多数のVTuberに分散しており、特定VTuber依存のリスクは高くないとの認識 ・ライバーが望む幅広い活動を支援する体制を構築し、卒業等のリスクを軽減 |
レピュテーションに関するリスク | ・公序良俗違反や知財侵害などの不適切な動画配信・活動の可能性 ・ライバーのスキャンダルや炎上によりレピュテーションが毀損される可能性 | ・コンプライアンス研修の実施とコンテンツ管理の徹底 ・第三者からの指摘に迅速に対応 ・内部統制を強化し、不適切な活動を未然に防止し、企業イメージ低下のリスクに備える体制を強化 |
ANYCOLOR 銘柄基本情報(株価データ)
以下のデータは、2025年6月10日時点のものです。
指標 | 数値 |
---|---|
株価 | 4,085円(2025/6/10終値) |
時価総額 | 約2,500億円 |
PER | 直近29倍/予想24倍 |
PBR | 約14倍 |
配当利回り | 約1.6% |
配当 | 65円予定(2025年4月期) |
ROE | 約53% |
ROA | 約40% |
株価チャート

まとめ
今回の記事では、2025年4月期(本決算)のANYCOLOR(エニーカラー・5032)決算資料について解説しました。
目覚ましいスピードで売上高・営業利益を上げ続けていますが、個人的にはどこまで持続できるかやや懐疑的な見方もしていました。
しかしながら、通期決算では多くの期待をいい意味で裏切る結果となり、強い業績を叩き出してきました。
今後、市場からはますます期待の目が向けられ、成長スピードが期待に及ばなかったときの株価への影響が高くなってくると思います。
ただ、私自身、にじさんじ所属のVTuberの配信をたまに見ることがありますが、面白いうえに勢いもドンドン増していると感じています。
このため、短中期的な目線での購入を検討する価値があるのではないかと迷っているところです。
なお、IR情報は以下の公式サイトから確認可能です。

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