今回の記事では、2025年2月28日から運用開始された資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)の投資信託説明書について解説します。
TOBハンターがどのような投資信託商品なのか知りたい方や、購入を検討されている方の参考になれば幸いです。
なお、本記事はTOBハンターの購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。
TOBハンターの最近の運用状況等については以下の記事でも紹介しています。
基本情報と概要
「TOBハンター(正式名称:資本効率向上ファンド)」は、日本国内の上場株式を主な投資対象とする追加型投資信託で、TOB(株式公開買い付け)が発生する可能性の高い企業に焦点を当てた戦略的ファンドです。運用はファイブスター投信投資顧問株式会社が委託し、信託財産の保管・管理は三井住友信託銀行が行っています。
なお、各種手数料は以下の通りで、信託報酬は年1.155%となっています。

このファンドはファミリーファンド方式で運用され、投資家が出資するベビーファンドは、マザーファンドを通じて実際の株式投資を行います。

投資の目的と運用方針
本ファンドの目的は、中長期的な資産の成長を目指しつつ、親子上場の解消や企業統治改革の進展に伴うTOB案件を好機と捉えた投資を行うことです。
具体的には、日本の株式市場に上場している企業のうち、以下のような特性を持つ銘柄に注目します。
- 親子上場状態の企業(親会社が子会社の株式を多く保有し、双方が上場している状態)
- 持分法適用会社(議決権比率20%以上50%未満の関連会社)
- 資本構成の見直しが期待される企業
- 株価が割安(PERやPBRが低水準)で市場評価が上昇余地のある企業
これらの企業は、親会社による子会社の完全子会社化、他企業による買収提案など、TOBの対象となることが多く、市場価格よりも高い買付価格が提示される傾向があるため、投資家にとって利益機会となり得ます。
TOBとは?
TOB(Take Over Bid:株式公開買い付け)とは、企業の株式を取得する際に、市場外で一定価格・期間・数量などを公告して広く株主から株式を買い取る仕組みです。通常は市場価格よりも高い価格が提示されるため、株式を保有している投資家にプレミアム(上乗せ利益)が期待できます。

投資プロセスと選定方法
- 500~600社の候補銘柄を抽出
東証に上場する全企業から、親子上場や持分法適用会社、バリュエーションが割安な企業などを抽出。 - ファンダメンタル分析によるスクリーニング
PER(株価収益率)、PBR(株価純資産倍率)などを基にフェアバリューと比較。割安と判断される企業に注目。 - 資本効率の変化・TOB可能性の評価
コーポレートガバナンスの進展や企業再編の兆候を考慮して、TOB発生可能性が高い企業を精査。 - 最終的に50~150社に分散投資
マザーファンドを通じてポートフォリオを構築。分散投資によりリスクコントロールも意識。
※参考ですが、2025年5月時点での保有銘柄数は179となっており、組入上位銘柄は住友電設、ブレインパッド、菱友システムズ、コスモスイニシア、シグマクシス・ホールディングス等となっています。

なぜ今、TOBに注目なのか?
ここ数年、日本ではTOB案件が急増しており、2025年には年間100件を超える可能性が示唆されています。背景には次のような構造的な変化があります。
- 政府主導の「金融立国」政策
企業に対し、資本コストの意識や株主価値の重視を求める姿勢が強まっています。 - 東京証券取引所の改革
プライム市場を中心としたコーポレートガバナンス改革が進み、資本効率の改善圧力が高まっています。 - 親子上場の解消圧力
企業価値向上の観点から、親子上場の見直しが推奨されており、再編や買収が促進されやすい土壌となっています。
このような環境下で、TOBを起点とした株価の急騰を狙う投資戦略は、今後より有効性が増すと予想されています。
TOBハンター公式サイトより:TOB案件数
TOBハンター公式サイトより:TOBプレミアム
分配・投資制限について
- 決算は年2回(5月・11月)。収益の分配は、基準価額水準・市況動向等を勘案して配当・利子収入や売買益から支払われますが、分配を行わない場合もあります。
- 株式への投資比率は基本的に高い状態を維持します。
- 外貨建資産には投資しません。
ファンドの特徴まとめ
特徴 | 内容 |
---|---|
投資対象 | 国内上場株式(TOB関連銘柄中心) |
期待される値上がり要因 | TOBによるプレミアム(通常株価より高い買付価格) |
分配方針 | 原則年2回の決算で状況に応じ分配。無分配の可能性もあり |
投資リスク | 株式相場の変動、TOB不発のリスクなど |
まとめ:このファンドはどんな人に向いている?
今回の記事では、資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)について解説しました。
このファンドは、次のような人に向いている投資商品といえます。
- 日本企業の構造改革や再編の流れに着目して投資したい人
- 親子上場解消を始めとするTOB案件を狙って、市場平均を超えるリターンを狙いたい人
TOBハンターは、従来のインデックス投信や高配当株型ファンドとは異なり、TOB(株式公開買付)やM&Aといった資本イベントを投資テーマとするアクティブファンドです。2025年5月末時点での1ヶ月リターンは+4.98%、設定来では+6.11%と、TOPIXを上回る好成績を記録しています。昨今活発なTOBに関心のある投資家にとっては一考に値するファンドといえるでしょう。
例えば、2025年5月は、NTTドコモや鳥居薬品など複数の企業でTOBが行われ、これによりキャピタルゲインを実現しました。ポートフォリオは小型・中型株を中心に構成されており、スタンダード市場の銘柄も多く含まれています。5月は小型バリュー株が不調でしたが、上記TOB等のイベントにより安定したパフォーマンスを維持しています。
個人的には、運用管理費用(信託報酬)が年1.155%と高く感じるため、私自身はTOBハンターを購入していません。ただし、上記のようなTOB実績は目を見張るものがあると感じています。上位組み入れ銘柄を参考に、割安性や配当利回り等を考慮した上で、一部の個別銘柄を購入してみるのも悪くないかなと考えているところです。
なお、TOBハンターについて興味のある方は、以下の公式サイトでも確認してみてください(リンク):

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