今回の記事では、資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)の2025年9月期の月次報告書について解説します。
TOBハンターの運用状況等を確認したい方の参考になれば幸いです。なお、本記事はTOBハンターの購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。
TOBハンターの8月期の月次報告書については以下の記事で紹介しています。
おさらい:TOBハンター2025年6月~8月の状況
項目 | 2025年6月 | 2025年7月 | 2025年8月 |
基準価額 | 11,033円 | 11,434円 | 12,000円 |
純資産総額 | 2,999百万円 | 3,489百万円 | 4,132百万円 |
1ヶ月リターン | +3.98% | +3.63% | +4.95% |
設定来リターン | +10.33% | +14.34% | +20.00% |
参考指数(TOPIX) | +1.96%(1ヶ月) | +3.17%(1ヶ月) | +4.52%(1ヶ月) |
保有銘柄数 | 183銘柄 | 194銘柄 | 200銘柄 |
組入上位銘柄 | ジャパンエンジンコーポレーション、 JMDC、 ダイハツインフィニアース | ジャパンエンジンコーポレーション、 住友ファーマ、 ダイハツインフィニアース | ジャパンエンジンコーポレーション、 住友ファーマ、 ダイハツインフィニアース |
市場別比率 | プライム約71%、 スタンダード約24%、 グロース約3.4% | プライム約71%、 スタンダード約24%、 グロース約3.7% | プライム約69% |
TOB状況 | CARTA HOLDINGS (NTTドコモによるTOB) | ザッパラス、 ナルミヤ・インターナショナル (株式交換) | 芦森工業、黒崎播磨、 東洋建設、ユタカ技研、 パシフィックシステム |
2025年9月期パフォーマンス概要
2025年9月期のTOBハンターは、TOPIXが史上最高値を更新する市場環境のなか、+1.01%のプラスリターンを確保しました。市況が小型株にとって逆風となる中、指数は下回ったものの、これで設定来7ヶ月連続のプラスリターンを達成しています。

- 1ヶ月リターン:+1.01%
- 参考指数(TOPIX)1ヶ月リターン:+2.98%
- 3ヶ月リターン: +9.86%
- 設定来リターン: +21.21%
- 基準価額: 12,121円
- 純資産総額: 4,291百万円
組入銘柄とポートフォリオ
9月末時点での保有銘柄数は200銘柄と前月から変動ありませんでした。組入上位銘柄では、新たに日本ドライケミカル、KADOKAWA、ブレインパッド、トレンドマイクロがトップ10入りしています。
No. | 銘柄コード | 銘柄名 | 業種 | 上場市場 | 組入比率 |
1 | 6016 | ジャパンエンジンコーポレーション | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1.38% |
2 | 4506 | 住友ファーマ | 医薬品 | プライム市場 | 1.24% |
3 | 4483 | JMDC | 情報通信 | プライム市場 | 1.11% |
4 | 1909 | 日本ドライケミカル | 機械 | スタンダード市場 | 1.10% |
5 | 9468 | KADOKAWA | 情報通信 | プライム市場 | 1.06% |
6 | 7552 | ハピネット | 卸売 | プライム市場 | 1.05% |
7 | 3655 | ブレインパッド | 情報通信 | プライム市場 | 1.03% |
8 | 6023 | ダイハツインフィニアース | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1.03% |
9 | 6269 | 三井海洋開発 | 機械 | プライム市場 | 1.02% |
10 | 4704 | トレンドマイクロ | 情報通信 | プライム市場 | 1.02% |
ポートフォリオの構成は、プライム市場が約69% 、時価総額500億円~2,000億円の中型株が約40%を占め 、引き続きプライム市場の中型株が中核となっています。
運用概況(2025年9月)
全体の市場環境とファンドへの影響
9月の日本株市場は、日経平均株価が+5.2%、TOPIXが+2.0%と上昇し、終値ベースの史上最高値を更新しました。米国の利下げ期待や国内の政治情勢などが背景です。 しかし、東証グロース市場250指数は大幅に下落するなど、小型株には不調な相場でした。そのため、小型バリュー株を多く組み入れる当ファンドにとっては若干の向かい風となり、指数を下回る結果となりましたが、プラスのリターンは確保しています。
9月のTOB実績
9月は投資先であった三菱ロジスネクストで日本産業パートナーズ(JIP)によるTOBが発生しました。
個人的には、-15.3%となった三菱ロジスネクストのディスカウントTOBについて言及がない点は気になります。
また、セブン銀行については伊藤忠商事による出資比率引き上げが発表されました。 レポートではセブン銀行の案件について、従来の完全子会社化を目指すTOBとは異なる新しい形の資本イベントであり、「今後の案件の広がりの象徴となる」と述べられています。
過去のTOB・資本イベント実績
9月に発生した2件がリストに追加されています。
No. | 銘柄コード | 銘柄名 | イベント | 直前の株価 (日付) | TOB価格 / 報道後株価 (日付) | 騰落率 |
1 | 4551 | 鳥居薬品 | 塩野義製薬によるTOB | 5,230円 (2025/5/2) | 6,350円 | +21.4% |
2 | 9613 | NTTデータ | NTTによるTOB | 2,991.5円 (2025/5/7) | 4,000円 | +33.7% |
3 | 7595 | アルゴグラフィックス | 自社株TOB 1株4,475円 | 5,200円 (2025/5/9) | 報道後の株価 5,570円 (2025/5/12) | +7.1% |
4 | 5476 | 日本高周波鋼業 | 神戸製鋼所による株式交換 1株に対して0.26株を割当 | 391円 (2025/5/9) | 報道後の株価 414円 (2025/5/12) | +5.9% |
5 | 1884 | 日本道路 | 清水建設によるTOB | 2,169円 (2025/5/13) | 2,520円 | +16.2% |
6 | 7163 | 住信SBIネット銀行 | NTTドコモによるTOB | 3,285円 (2025/5/28) | 4,900円 | +49.2% |
7 | 3688 | CARTA HOLDINGS | NTTドコモによるTOB | 1,531円 (2025/6/16) | 2,100円 | +37.2% |
8 | 9275 | ナルミヤ・インターナショナル | ワールドによる株式交換 1株に対して0.58株を割当 | 1,624円 (2025/7/3) | 報道後の株価 1,416円 (2025/7/4) | -12.8% |
9 | 3770 | ザッパラス | 光通信による株式交換 1株に対して0.0104株を割当 | 387円 (2025/7/25) | 報道後の株価 413円 (2025/7/28) | +6.7% |
10 | 5352 | 黒崎播磨 | 日本製鉄によるTOB | 3,450円 (2025/8/1) | 4,200円 | +21.7% |
11 | 3847 | パシフィックシステム | 太平洋セメントによるTOB | 5,250円 (2025/8/8) | 6,850円 | +30.5% |
12 | 3526 | 芦森工業 | 豊田合成によるTOB | 2,880円 (2025/8/8) | 4,140円 | +43.8% |
13 | 1890 | 東洋建設 | 大成建設によるTOB | 1,644円 (2025/8/8) | 1,750円 | +6.4% |
14 | 7229 | ユタカ技研 | マザーサングローバル (オランダ)によるTOB | 2,843円 (2025/8/28) | 3,024円 | +6.4% |
15 | 8410 | セブン銀行 | 伊藤忠商事による出資比率引き上げ発表 | 290.1円 (2025/9/26) | 発表後の株価 300円 (2025/9/29) | +3.4% |
16 | 7105 | 三菱ロジスネクスト | 日本産業パートナーズ (JIP) によるTOB | 1,815円 (2025/9/30) | 1,537円 | -15.3% |
今後の見通しと戦略
レポートでは、今後の見通しと戦略について以下のように述べられています。
日経平均株価は10月9日時点で既に48,000円を超えており、株価見通しを上回る非常に強い値動きとなっています。
- 今後の株価見通し
- 日経平均株価で42,000円から45,000円のレンジで、下値リスクを孕んだ展開を予想。
- 現在の株価は高水準にあり、需給主導の側面が強いものの、米国経済の減速リスクなども残るため注意が必要。
- 今後の戦略
- 現在のポートフォリオを軸としつつ、常に最適なポートフォリオを追求する方針は不変。
- 東証のPBR改善要請が引き続き追い風になると見ている。
- 今後は「親子上場解消以外の形」の資本イベントが増加する可能性があり、今回のセブン銀行の案件は、その新たな形態の資本イベントを取り込むことに成功したと評価している。
まとめ
今回の記事では、「資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)」の2025年9月期の月次報告書について解説しました。 9月期は、小型株には厳しい市場環境であったものの、プラスリターンを確保し、設定来7ヶ月連続のプラスとなりました。また、三菱ロジスネクストにてディスカウントTOBがあったものの、セブン銀行の案件ではこれまでとは異なる形の資本イベントを捉えており、今後の収益源の多様化にも期待が持てる内容でした。
ただし、9月は半導体関連銘柄をはじめとする日経平均株価が強すぎたため、個人的にはTOB関連に対する関心が相対的に小さかったように思います。
その意味では、TOBは指数が横ばいか、下落しているときこそ目立つものなのかもしれません。実際、そのような場合の方がTOBによる株価上昇の恩恵を受けやすいと思います。
TOBハンターによる投資戦略については以下の記事でも紹介しています。
TOBハンターについて興味のある方は、以下の公式サイトでも確認してみてください(リンク):

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