今回の記事では、資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)の8月期の月次報告書について解説します。
TOBハンターの運用状況等を確認したい方の参考になれば幸いです。なお、本記事はTOBハンターの購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。
TOBハンターの7月期の月次報告書については以下の記事でも紹介しています。
おさらい:TOBハンター2025年3月~7月の状況
項目 | 2025年5月 | 2025年6月 | 2025年7月 |
基準価額 | 10,611円 | 11,033円 | 11,434円 |
純資産総額 | 2,523百万円 | 2,999百万円 | 3,489百万円 |
1ヶ月リターン | +4.98% | +3.98% | +3.63% |
設定来リターン | +6.11% | +10.33% | +14.34% |
参考指数(TOPIX) | +5.10%(1ヶ月) | +1.96%(1ヶ月) | +3.17%(1ヶ月) |
保有銘柄数 | 179銘柄 | 183銘柄 | 194銘柄 |
組入上位銘柄 | 住友電設、ブレインパッド、菱友システムズ | ジャパンエンジンコーポレーション、JMDC、ダイハツインフィニアース | ジャパンエンジンコーポレーション、住友ファーマ、ダイハツインフィニアース |
市場別比率 | プライム69.7%、スタンダード約25%、グロース約2.6% | プライム約71%、スタンダード約24%、グロース約3.4% | プライム約71%、スタンダード 約24%、グロース 約3.7% |
TOB状況 | NTTドコモ・鳥居薬品・住信SBIなど複数TOB | CARTA HOLDINGS(NTTドコモによるTOB) | ザッパラス、ナルミヤ・インターナショナル(株式交換) |
2025年8月期パフォーマンス概要
2025年8月期のTOBハンターは、TOPIXが+4.5%と堅調な日本株市場を背景に、それを上回る+4.95%のパフォーマンスを達成しました。これにより、設定来リターンは6ヶ月で+20.00%となりました。

- 1ヶ月リターン:+4.95%
- 参考指数(TOPIX)1ヶ月リターン:+4.52%
- 3ヶ月リターン: +13.09%
- 設定来リターン: +20.00%
- 基準価額:12,000円
- 純資産総額:4,132百万円
組入銘柄とポートフォリオ
8月末時点での保有銘柄数は200銘柄です。組入上位銘柄は、ジャパンエンジンコーポレーション、住友ファーマ、ダイハツインフィニアースなど、前月から大きな変動はありませんでした。
No. | 銘柄コード | 銘柄名 | 業種 | 上場市場 | 組入比率 |
1 | 6016 | ジャパンエンジンコーポレーション | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1.44% |
2 | 4506 | 住友ファーマ | 医薬品 | プライム市場 | 1.16% |
3 | 6023 | ダイハツインフィニアース | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1.15% |
4 | 7552 | ハピネット | 卸売 | プライム市場 | 1.07% |
5 | 5727 | 東邦チタニウム | 非鉄金属 | プライム市場 | 1.05% |
6 | 6368 | オルガノ | 機械 | プライム市場 | 1.05% |
7 | 6269 | 三井海洋開発 | 機械 | プライム市場 | 1.04% |
8 | 4483 | JMDC | 情報通信 | プライム市場 | 1.03% |
9 | 9110 | NSユナイテッド海運 | 海運 | プライム市場 | 1.02% |
10 | 9719 | SCSK | 情報通信 | プライム市場 | 1.00% |
ポートフォリオの構成を見ると、上場市場別ではプライム市場が約69% 、時価総額別では500億円~2,000億円の中型株が約41%を占めており 、引き続きプライム市場の中型株がポートフォリオの中核であることがわかります。
運用概況(2025年8月)
全体の市場環境とファンドへの影響
8月の日本株市場は、米国の利下げ観測や好決算銘柄への物色買いなどを背景に、日経平均株価は+4.0%、TOPIXは+4.5%と全体的に上昇しました。
ファクター別では、7月に続きバリュー優位の展開となり、特に大型バリュー株が優位でした。小型バリュー株を多く組み入れている当ファンドにとっては若干の追い風となり、TOPIXと日経平均株価を上回るリターンを達成しました。
8月のTOB実績
8月は投資先であった芦森工業、黒崎播磨、東洋建設、ユタカ技研、パシフィックシステムの5社でTOBイベントが発生しました。このうちユタカ技研を除く4社については、利益確定を兼ねた売却を完了しています。
レポートでは「当月は、TOBイベントが多く発生し、それが指数を上回る一因になりましたが、当月のリターンに寄与した上位10銘柄はTOBイベントと関係がなかった銘柄でした」と述べられており、イベント発生に関わらず収益を上げるファンドの特長が発揮された月となりました。
過去のTOB・資本イベント実績
No. | 銘柄コード | 銘柄名 | イベント概要 | 直前の株価(日付) | TOB価格 / 報道後株価(日付) | 騰落率 |
1 | 4551 | 鳥居薬品 | 塩野義製薬によるTOB | 5,230円(2025/5/2) | 6,350円 | +21.4% |
2 | 9613 | NTTデータ | NTTによるTOB | 2,991.5円(2025/5/7) | 4,000円 | +33.7% |
3 | 7595 | アルゴグラフィックス | 自社株TOB(1株4,475円) | 5,200円(2025/5/9) | 5,570円(2025/5/12) | +7.1% |
4 | 5476 | 日本高周波鋼業 | 神戸製鋼所による株式交換(1株に対し0.26株を割当) | 391円(2025/5/9) | 414円(2025/5/12) | +5.9% |
5 | 1884 | 日本道路 | 清水建設によるTOB | 2,169円(2025/5/13) | 2,520円 | +16.2% |
6 | 7163 | 住信SBIネット銀行 | NTTドコモによるTOB | 3,285円(2025/5/28) | 4,900円 | +49.2% |
7 | 3688 | CARTA HOLDINGS | NTTドコモによるTOB | 1,531円(2025/6/16) | 2,100円 | +37.2% |
8 | 9275 | ナルミヤ・インターナショナル | ワールドによる株式交換(1株に対し0.58株を割当) | 1,624円(2025/7/3) | 1,416円(2025/7/4) | -12.8% |
9 | 3770 | ザッパラス | 光通信による株式交換(1株に対し0.0104株を割当) | 387円(2025/7/25) | 413円 (2025/7/28) | +6.7% |
10 | 5352 | 黒崎播磨 | 日本製鉄によるTOB | 3,450円(2025/8/1) | 4,200円 | +21.7% |
11 | 3847 | パシフィックシステム | 太平洋セメントによるTOB | 5,250円(2025/8/8) | 6,850円 | +30.5% |
12 | 3526 | 芦森工業 | 豊田合成によるTOB | 2,880円(2025/8/8) | 4,140円 | +43.8% |
13 | 1890 | 東洋建設 | 大成建設によるTOB | 1,644円(2025/8/8) | 1,750円 | +6.4% |
14 | 7229 | ユタカ技研 | マザーサングローバルによるTOB | 2,843円(2025/8/28) | 3,024円 | +6.4% |
今後の見通しと戦略
TOBハンターでは、今後の日経平均株価について40,000円から44,000円のレンジでの、下値リスクを孕んだ展開を予想しています。
- 日経平均の44,000円近い水準は、外国人投資家の買いによる需給主導の上昇であり、企業業績を前提にすれば正当化はできるが、行き過ぎ感もある。
- 米国経済減速や関税影響などリスクが残り、短期的な上値余地は限られる。
- 一方で、自社株買い・株主還元や2026年以降の半導体回復が下支え要因となる。
今後の戦略
このような見通しのもと、今後の戦略として以下の点を挙げています。
- 現在のポートフォリオを軸としつつ、投資ユニバースを定期的に見直し、常に最適なポートフォリオを追求する。
- 東証によるPBR1倍割れ企業への改善要請が、企業の資本効率向上の動きを加速させており、ファンドにとって強い追い風が続くと見ている。
- 今後は純粋な親子上場解消だけでなく、持分法適用会社へのTOB、M&A、非上場化(MBO)といった「親子上場解消以外の形」での資本イベントが増加すると予想しており、投資機会は引き続き豊富に存在すると考えている。
まとめ
今回の記事では、「資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)」の2025年8月期の月次報告書について解説しました。
8月期は、5社でTOBイベントが発生するなど、ファンドの戦略が功を奏し、前月末比+4.95%というTOPIX(同+4.52%)を上回るリターンを達成しました。これで設定来6ヶ月連続のプラスリターンとなり、純資産総額も40億円を突破するなど、順調に運用されている様子がうかがえます。
運用が始まった頃の3~4月はTOB案件が1件もなかったのですが、ここ最近では立て続けに発生しています。日本株全体としてもTOBが多いと感じ、個別株投資でも利益を得るチャンスが広がっていると思います。
TOBハンターによる投資戦略については以下の記事でも紹介しています。
TOBハンターについて興味のある方は、以下の公式サイトでも確認してみてください(リンク):

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