今回の記事では、資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)の7月期の月次報告書について解説します。
TOBハンターの運用状況等を確認したい方の参考になれば幸いです。
なお、本記事はTOBハンターの購入をオススメする意図はありませんので、投資判断は自己責任にてお願い致します。
TOBハンターの6月期の月次報告書については以下の記事でも紹介しています。
おさらい:TOBハンター2025年3月~7月の状況
項目 | 2025年3月 | 2025年4月 | 2025年5月 | 2025年6月 |
基準価額 | 10,050円 | 10,108円 | 10,611円 | 11,033円 |
純資産総額 | 1,994百万円 | 2,162百万円 | 2,523百万円 | 2,999百万円 |
1ヶ月リターン | +0.50% | +0.58% | +4.98% | +3.98% |
設定来リターン | +0.50% | +1.08% | +6.11% | +10.33% |
参考指数(TOPIX) | +0.22%(1ヶ月) | +0.33%(1ヶ月) | +5.10%(1ヶ月) | +1.96%(1ヶ月) |
保有銘柄数 | 167銘柄 | 173銘柄 | 179銘柄 | 183銘柄 |
組入上位銘柄 | 菱友システムズ、セプテーニHD、シグマクシスHD | シグマクシスHD、コスモスイニシア、ダイハツディーゼル | 住友電設、ブレインパッド、菱友システムズ | ジャパンエンジンコーポレーション、JMDC、ダイハツインフィニアース |
市場別比率 | プライム67%、スタンダード27% | プライム69%、スタンダード26% | プライム69.7%、スタンダード25.35%、グロース2.56% | プライム約71%、スタンダード24.28%、グロース3.38% |
TOB状況 | TOBなし | TOBなし | NTTドコモ・鳥居薬品・住信SBIなど複数TOB | CARTA HOLDINGS(NTTドコモによるTOB) |
2025年7月期パフォーマンス概要
2025年7月期のTOBハンターは、TOPIXが過去最高値を更新するなど好調な日本株市場を背景に、TOPIXを上回るパフォーマンスを達成しました。これにより、設定来5ヶ月連続のプラスリターンとなり、安定した運用が続いています。

- 1ヶ月リターン: +3.63%
- 参考指数(TOPIX)1ヶ月リターン: +3.17%
- 3ヶ月リターン: +13.12%
- 設定来リターン: +14.34%
- 基準価額: 11,434円
- 純資産総額: 3,489百万円
組入銘柄とポートフォリオ
7月末時点での保有銘柄数は194銘柄です。組入上位銘柄は、ジャパンエンジンコーポレーション、住友ファーマ、ダイハツインフィニアースなどとなっています。上位銘柄の顔ぶれは毎月少しずつ変化が見られます。
No. | 銘柄コード | 銘柄名 | 業種 | 上場市場 | 組入比率 |
1 | 6016 | ジャパンエンジンコーポレーション | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1.20% |
2 | 4506 | 住友ファーマ | 医薬品 | プライム市場 | 1.20% |
3 | 6023 | ダイハツインフィニアース | 輸送用機器 | スタンダード市場 | 1.12% |
4 | 4343 | イオンファンタジー | サービス | プライム市場 | 1.06% |
5 | 7552 | ハピネット | 卸売 | プライム市場 | 1.03% |
6 | 4483 | JMDC | 情報通信 | プライム市場 | 1.03% |
7 | 4107 | 伊勢化学工業 | 化学 | スタンダード市場 | 1.02% |
8 | 9719 | SCSK | 情報通信 | プライム市場 | 1.02% |
9 | 8844 | コスモスイニシア | 不動産 | スタンダード市場 | 1.01% |
10 | 6368 | オルガノ | 機械 | プライム市場 | 1.00% |
ポートフォリオの構成を見ると、上場市場別ではプライム市場が約71%、時価総額別では500億円~2,000億円の中型株が約42%を占めており、引き続きプライム市場の中型株がポートフォリオの中核であることがわかります。
運用概況(2025年7月)
全体の市場環境とファンドへの影響
7月の日本株市場は、下旬にかけて自動車株などが上昇を牽引し、日経平均株価は一時42,000円を超え、TOPIXも終値で過去最高値を更新するなど、全体的に堅調な相場でした。
ファクター別では、5月、6月とは打って変わってバリュー優位・グロース劣位が明確となり、特に小型バリュー株が優位な展開でした。
小型バリュー株を多く組み入れている当ファンドにとっては追い風となり、TOPIXと日経平均株価を上回るリターンを達成しました。
7月のTOB実績
このような市場環境の中、7月は投資先であったザッパラス(光通信による株式交換)とナルミヤ・インターナショナル(ワールドによる株式交換)で資本イベントが発生し、利益確定を兼ねた売却が完了しています。
レポートでは「イベント件数は少なかったものの、それでも指数を上回りました。このように、必ずしもイベントが発生しなくても勝てる要素が組み込まれているのが当ファンドの特長」と述べられています。
今後の見通しと戦略
今後の株価見通しと対応
TOBハンターでは、今後の日経平均株価について38,000円から41,000円のレンジでの、下値リスクを孕んだ展開を予想しています。
短期的には、関税問題の影響や米国の雇用統計の低調さなどからネガティブ材料に反応しやすい局面に差し掛かっていると警戒しつつも、中期的には自社株買いや増配といった株主還元が相場の下支えになると見ています。
今後の戦略
このような見通しのもと、今後の戦略として以下の点を挙げています。
- 現在のポートフォリオを軸としつつ、投資ユニバースを定期的に見直し、常に最適なポートフォリオを追求する。
- 東証によるPBR1倍割れ企業への改善要請が、企業の資本効率向上の動きを加速させており、ファンドにとって強い追い風が続くと見ている。
- 今後は純粋な親子上場解消だけでなく、持分法適用会社へのTOB、M&A、非上場化(MBO)といった「親子上場解消以外の形」での資本イベントが増加すると予想しており、投資機会は引き続き豊富に存在すると考えている。
トピックス:「複数ファンド運用」の相乗効果
7月期の月次報告書では、「複数ファンドを運用することを通じた相乗効果にご期待ください」という興味深いトピックスが掲載されていました。
(前略)一方で、株式市場においてTOBが発生すると、当ファンドが注目する通り、「買われる側の企業の短期的株価上昇効果」に目が行きがちになり、上記のような「買い手にとっての中長期的メリット」への注目がやや軽視されるように思います。しかし、欧米の巨大企業は、TOBなどの企業買収を通じて、競合企業数を少なくする形で独占・寡占的地位を作り上げて価格支配力を強め、既存事業と類似の基盤で展開する隣接産業に進出して低価格戦略などをしかけてその産業での競合先を駆逐する、といった形で大きな成長を果たす例も多く見られます。
このように考えていくと、私はいずれは、上手な買収を通じて中長期的に成長を実現する会社、要は、「買う側の会社」に対する評価が見直されると考えております。
その考え方は、いずれは当ファンドにおいても体現できる可能性はあると思いますが、短期的には私が運用する他のファンドで活かすことが可能と考えます。ここに、私が別のファンドを運用する利点が出てきます。逆に、買い手となることが多い大企業をリサーチすることで、今後どのような会社や業界が買われる候補になるかのイメージができてくることがあり、その場合には、別のファンドを運用することが、当ファンドの運用に資することに繋がります。
大谷翔平選手が二刀流を始めた頃は、多くの評論家が反対していましたが、それに成功すると誰もこの姿勢に反論する人がいなくなりました。私は、大谷選手の二刀流が成功した要因は、実は、投手と打者を同時並行的に努めることで互いに相乗効果が生じていることであると考えています。その効果が見えずその領域にも達していない凡人が二刀流に反対していましたが、大谷選手にはその相乗効果が見えていたのではないかと踏んでおります。(後略)
TOBハンター 7月期 月次報告書より:トピックス「複数ファンドを運用することを通じた相乗効果にご期待ください」
運用者が他のファンドでTOBの「買う側」の企業をリサーチすることが、当ファンドで投資する「買われる側」の候補企業のイメージ作りに繋がり、逆もまた然り、という相乗効果を二刀流に例えて説明しています。このような運用者の哲学が垣間見えるのも、月次報告書の面白い点です。
まとめ
今回の記事では、「資本効率向上ファンド(愛称:TOBハンター)」の2025年7月期の月次報告書について解説しました。
7月期は、小型バリュー株が優位な市場環境を追い風に、ザッパラスやナルミヤ・インターナショナルでの資本イベントもあり、前月末比+3.63%というTOPIX(同+3.17%)を上回るリターンを達成しました。
これで5月から実質3ヶ月連続で組入銘柄にてTOBが発生しました。
個人的には、組入銘柄第4位のイオンファンタジー(4343)に注目しています。最近ではイオンモールでTOBが発生しており、それに続く可能性があるのではないかと推測しています。その他イオングループとしては、高配当となっているイオンフィナンシャルサービス(8570)にも注目しています。
TOBハンターによる投資戦略については以下の記事でも紹介しています。
TOBハンターについて興味のある方は、以下の公式サイトでも確認してみてください(リンク):

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