『アート・オブ・スペンディングマネー』感想

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今回の記事では、『アート・オブ・スペンディングマネー:1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』を読んだ感想を書いていきます。
著者はモーガン・ハウセル、訳:児島修です。

同著者の前作『サイコロジー・オブ・マネー』の続編です。

全体を通して

対象の読者としては、これから資産形成をがんばっていきたいと思っている人や、支出が多くて中々貯蓄が上手くいかない人などだと感じました。

既にある程度まとまった資産形成が進んでいる人にとっては当たり前に感じる内容も多いかもしれません。

また、本書で度々言われている「金持ち」の定義が日本の感覚とは少し異なると感じました。日本で言えばかなりの大金持ちについて戒める内容があるのですが、それだけの資産を築いている日本人はそれ程多くないと思います。本書における高所得者の想定レベルの違いを感じました。

本書で少し残念だったのは、具体的なデータや統計に基づく解説がやや少なかった点です。様々なエピソードを引用してお金に関するマインドを解説されていたのは良かったのですが、やや著者の主観的な主張という側面が強くなってしまっていると感じました。

ただし、読み物としては面白かったです。
単純にお金に関する様々な考え方を知ったり、資産形成をする上での心構えを再度確認したい人などにはおすすめです。

特に印象に残った箇所について、いくつか書いていきます。

第4章 見えざる真実

普段から幸せを感じていない人は、お金が増えても幸せを感じにくい

これまでは、お金と幸福に相関があるという説や、無関係だという説など、様々な研究がありましたが、つい最近その議論に終止符が打たれました。

それは、もともと幸福度が低い人は、収入が増えても幸せに感じにくいということが研究で分かったそうです。

幸福度が中程度以上の人については、お金が増えることによって幸福度が上がることが分かりました。お金が幸福度の促進剤のような役割を果たすそうです。

これは直感的に理解できる話ではありますが、私自身のこれまでの人生を振り返ってみると、満足していた期間はそれほどなく、自分で幸せを感じる人生を送ってこなかったと思います。

その意味では、この研究結果はちょっとショックでしたね。
私は既に資産形成を進めているところですが、いくら資産額が大きくなったとしても幸福度は上がらないということであり、そのことを実感し始めています。

第5章 最も価値ある資産

その支出は「外」のため?「内」のため?

1968年に開催された世界一周のヨットレースに出場した2人のエピソードを通じて、人生を測る2つの物差しである「内的な基準」と「外的な基準」が解説されています。

前者は自分が満足しているかどうか、後者は他人からどう思われているかを基準とします。

充実感のある人生を送るためには、基本的には「内的な基準」が重要となりますが、結局はそのバランスが重要であるという内容です。

確かに内的な基準だけを考えて人生を送れれば最高かもしれませんが、普通の日常生活を送るうえで他人からの視線を完全に無視して過ごすことはほぼ不可能だと思います。

両極端の2人のエピソードはとても面白かったので、ぜひ本書で読んでみてください。

第6章 あなたを幸せにするもの

幸せは「ギャップ」に宿る

人は、普段慣れ親しんでいるものと比べてギャップがあれば、どれだけ平凡な物事でもとてつもなく素晴らしく感じることがあるという内容が解説されています。

これも直感的に分かりやすい話ではないでしょうか。

だからこそ本書でも、贅沢はたまにするくらいがちょうどいいと書かれていますね。
贅沢に慣れてしまうと、それが当たり前になり、感動などが無くなってしまうからです。

とある大物YouTuberも、同じようなことを言っていましたね。
事業で成功し、金持ちになったあと、毎日高級レストランで外食をしていたそうです。

久しぶりに実家に帰ったときに、母がせっかく帰省したのだからと「スーパーで少し高い寿司を買ってきた」と振る舞ってくれたそうです。
その寿司を食べたYouTuberの1口目の感想が…「まっず!」だったそうです笑

これらの話を聞くと、普段質素に生活するのも悪くないのかもしれませんね。
普段から倹約が身に付いている人ならば、資産が大きく貯まってきても、たまの贅沢を存分に楽しめます。

第9章 リスクと後悔

今を生きるか?未来のために倹約するか?

9章では、巷でよく論争になる「今を楽しむために金を使うか、将来のために貯蓄するか」問題について言及されています。

本書の結論としては、「後悔最小化を目指せ」ということです。つまり、自分が死ぬときになって、今の行動に後悔しないかどうかを基準に考えるというものです。

この考え方は冷静になってみると当たり前の話ですが、改めて1日1日を大切に生きていくことが重要だということを再認識させられましたね。

本書では、だからこそ経験や思い出は重要であり、資産同様、年々価値が大きくなっていると書かれています。
これは、『DIE WITH ZERO』という本で言及されていた「思い出の配当」と同じ考え方ですね。

ただし、貯蓄は「今日を犠牲にすること」ではなく、将来の自由のために行っている行動であり、結局はバランスが重要であるということが解説されています。

私も全く同感で、「若いうちに経験に使え派」と「若いうちから貯蓄しろ派」の論争が起きるたびに思うのは、「両方やればいいじゃん」ということです。
つまり、貯蓄をベースとしながらも、自分が本当に使いたいと思う価値のあることに対してお金を使えばいいと思います。

倹約家ならば当たり前の内容と警告

その他、本書では次のようなことが書いてありましたが、倹約が身に付いている人にとっては既に当たり前に感じられるかと思います。

  • ステータスのためにお金を使うな
  • お金を使うことや貯めることを自分のアイデンティティにするな
  • もっとお金があれば、あらゆる問題を解決できるわけではない
  • 他人のアドバイスやライフスタイルに振り回されるな
  • 高級品を持っていても周りから注目を集められるわけではない

本書で1つだけ気になったのは、過度な倹約などによって「お金の囚人になっていないか?」という内容です(第7章:金持ちと真に豊かな人の違い)。

お金を追い求めすぎることによって、お金を手段として使うのではなく、お金に支配されてしまいかねないという内容が本書の各所で記載されています。

これは非常にバランスが難しく、前述の「第9章 リスクと後悔」にて蓄財の重要性を説いているのと紙一重の違いであると感じました。
FI(経済的自立)を追い求めて資産形成を進めているのに、あまりにも自由にお金を使ってしまうと、FIから遠ざかってしまうからです。

ただし、本書が想定している「自分の経済的階級に合わせてお金を使うべき層」は、日本で想定される小金持ちよりも高いレベルだと感じました。
私自身は、これまで通りのペースで倹約・資産形成を続けていきたいですね。

まとめ

本記事では、モーガン・ハウセル著『アート・オブ・スペンディングマネー:1度きりの人生で「お金」をどう使うべきか?』の感想と、特に印象に残った箇所をご紹介しました。

本書は、具体的な投資テクニックや数字の増やし方を学ぶというよりは、お金とどう付き合っていくか、人生の満足度をどう高めるかという哲学的な問いに対するヒントをくれる一冊でした。

記事内でも触れましたが、個人的にはデータや統計の裏付けがもう少し欲しかったという点は否めません。しかし、それを差し引いても、長く資産形成を続けていく上での精神的な土台を整えるという意味で、読む価値は十分にあると感じました。

特に、以下のような方におすすめできます。

  • これから資産形成をがんばっていきたいと思っている人
  • 支出が多くて中々貯蓄が上手くいかない人
  • 資産形成に熱心になりすぎて、「今」の優先順位が著しく低くなってしまっている人
  • SNSなどで他人の資産額や生活レベルを見て、焦りを感じている人
  • お金を使うことに罪悪感を感じてしまう人

お金を増やすことは数値で成果が見えますが、上手にお金を使って幸せを感じることには明確な正解がありません。

私自身も、お金はあくまで自由で豊かな人生を送るためのツールであることを忘れず、資産額だけでなく、自分の心の中の幸福度とも向き合いながら、後悔のないようバランスよく付き合っていきたいですね。

もし興味を持たれた方は、ぜひ手に取ってみてください。

*投資判断は自己責任にてお願い致します

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